2013年5月5日日曜日

権現仙人の伝言




僧は、『私の言うことを後の世に伝言することの出来る者はお前しかいないから、次の事をよく聞け』と申され、次の五ヶ条の伝言を授けられた。

(1)『文字の無い時代の事は信じられないと言う人がいるが、文字のない時代には伝人がいて、一度聞いた事は絶対忘れる事はなく、 次の世代に伝える人が次から次にと生まれて神秘的な記憶力の持ち主が沢山いる。文字が出来てもその人の考え方や立場から、 良きにつけ悪しきにつけ書き残して伝えられている。日本の神代の事も大和民族の事も根源があっての事であるから、 ただ神話として聞き捨ててはならない。』

(2)『お釈迦様やキリストは、日本に神や仏の道を布教の為に来日されている。キリストのお墓は青森県か岩手県に、 確かに実在している。又、お釈迦様のお母様は、神戸の摩耶山に祭られている』

(3)『死んだら必ず霊はあるものとして、生きている間に善を積んでおけ。そうすれば死んで仏の元に行けるが、 霊は無いものとして善を行わずして死んで霊があったときには地獄に行き、取り返しの付かない事になるから、 死んでも霊はあるものとして常に善を積むように心掛けておく事である。』

(4)『狐や狸は、昔は人間以上の知恵のあるものがいて人に災いをしたが、文明は狐や狸の最も怖い音や光を出すから、 知恵のあるものは生まれなくなっている。』

(5)『昼食時、茶の間の板戸に越中富山の薬売人が置いて行った日露戦争の画が張ってあるのを見て、 戦争は勝っても負けても損であるから良くないが、地球に人が住んでいる限り生きる為に国を盗ったり盗られたりするので、恐ろしい事である。』

(6)『それよりもっと恐ろしいのは、今から約100年後に天災と人災により地球上に大変動が発生し、約3年間にわたり地球が冷下、 大地震・大津波・大暴風雨等悪天候が続き、害虫類が多発し、人類が滅亡する時期が来る。

その時期に人類の滅亡を防ぐには唯ひとつ、そろは天の神仏に地球の安全を今日から祈願する事である。 その方法は全世界の人が人種・思想・宗教の別なく男も女も老いも若きも一致団結して地球の安全を祈願する事である。 又一方では、この地球の変動に打ち勝つ為に、強健なる体力と健全なる精神をもつ子孫を後世に残さなければならない。 これが為には、男は強い完全なる子種を女に授け、女は妊娠したら胎教、即ち子孫の中に子どもがいる間に神仏を信心し修養、 良き子を産み育て、子孫の繁栄を常に心掛けねばならない。

文明は世が進歩するが、一方では地球を破壊し人体を毒化しつつあるから、これに抵抗出来得るよう常に粗末な衣食住に慣れ、 強健な体力と健全なる精神力を養い置く事を忘れてはならない。 天災や人災で地球上に大変動が発生したら、都会の人は大半滅亡し、田舎の山間部の人は辛うじて生き残る事が出来るが、 食料に不足し飢餓死するからこれを防ぐ為には、今のうちから自然食の保存に留意しておかねばならない。 その自然食とは、実のなる桃・梨・柑橘類・くるみ・栗・柿・しい・ドングリ等、山菜類ではくず・わらび・ぜんまい・よもぎ・れんこん等、 薬草類ではせんぶり・はっか等、いずれも現在の無災害時から各家庭毎に植え付けておく事。 災害が来てからでは間に合わないから、又、悪天候と戦争は地球上に人類の生存する限り何時起こるか判らないから、 自然食は平素から確保しておく事を忘れてはならない。』

『自然食の体験の為三年余り比婆山に篭もり修行して結果、生き抜く事が出来るのを確かめたから之を信じ、 平素から少しでも実行して非常時に備えておく必要がある。

又、山篭もりする前に人間に最も近い猿の生活状況を研究し、猿は草木を食し繁生しているから、 仙人生活にいつでも生きて行くのに困る事はないと比婆の山猿を共に生活したが、何ひとつ困った事はなかった。

この仙人生活中、山の動物は生きる為に昼夜を問わず動き、残った食物は木の枝に、土の中に、色々と工夫して貯えている事を知り、 人も100年後の大危機に備えて粗食に慣れ、常に動き持久力をつけ、食物を貯える方法を研究し置かねば、 人類滅亡を防ぐ事が出来ない。』と諭された。

最後に僧は、『地球上の大変動のなきよう、又、仙人となり権現山で地球の安全を祈願する』と言われ、祖父に別れを告げて芦谷を出たのである。